2014年2月23日

Die Frau mit den 5 Elefanten

スヴェトラーナ・ガイヤーという翻訳家の女性のドキュメンタリー。

84歳という高齢でありながら現役。
大きく腰が曲がった体ながらてきぱきと家事をこなす。
アイロンをかけながら彼女は言う。
洗濯をすると糸が絡まる。正しい方向へ戻してあげるのだ。
文章(TEXT)と織物(TEXTILE)は語源は同じ。
言葉を織り上げて文章ができるのだ。

この映画の原題は“Die Frau mit den 5 Elefanten”
ドストエフスキーの5大長編作品、『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』『悪霊』『未成年』『白痴』のことを、彼女は「5頭の象」と呼ぶ。
その中の『罪と罰』を、“Schuld und Shüne(罪と贖罪)”と訳した。
それは、ウクライナからドイツにいわば亡命した彼女の「贖罪」なのかもしれない。

心に残ったシーンがある。
「翻訳する時は、鼻を高く上げなさい」
文章を左から右に追って訳してはいけない。
内容を一度自分の中に取り込んでから訳しなさい、ということ。
全体を見るのだ。

これは、情報社会を生きる私たちに共通しているのではないかと思う。
切り取られた一部だけを見て、すべてを知ったような気になっている。
それではいけないのだ。全体を見なければ。

84歳の女性から、たくさんのことを学んだ。
彼女のように、芯をもち、たおやかに、生きたい。

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